会長挨拶

第37回日本臨床栄養学会総会 会長挨拶

第37回日本臨床栄養学会総会
会長 多田紀夫(東京慈恵会医科大学)

平成27年10月2日(金)〜10月4日(日)、東京にて「第37回日本臨床栄養学会総会・第36回日本臨床栄養協会総会 第13回大連合大会」が開催される運びとなりました。今回の会場は日本臨床栄養学会総会の伝統かつ歴史的開催会場でもあります都市センターホテルが選定されました。

わが国の「臨床栄養学の発展」を目的に日本臨床栄養協会と手を携え、大連合大会と銘打ち同時開催となって早や13回目を迎えます。そして、この第13回大連合大会の開催テーマは栄養学の原点に回帰し「疾病の発症と重症化を予防する栄養学」としました。まさしく臨床栄養学とは、regulatory scienceの一翼を担い、広く国民の健康保持・増進を見据え、生活習慣病を中心とした疾病の発症と重症化の予防を講じ、かつ疾病に陥った人々を社会復帰に導く手段としての栄養の効用を駆使すべく道を開く学問であります。とりわけ「日本人の栄養摂取基準2015年版」策定とも期を一にし、科学的根拠に基づいた栄養学の発展が疾病の発症と重症化予防に寄与した軌跡を改めて探り、臨床医療に立ち返り、創設された計画を実地・実践し、効果の検証を重ね、新たな方策を練る場となることは第13回大連合大会の大きな柱であります。

さらに、疾病予防ならびに治療と対峙するとき、問われるものの1つに「セルフケア、セルフメディケーションの推進」があります。そこには個または集団の生活習慣改善からはじまり、疾病予防のための食事・栄養、そして治療食としての「人間栄養学」の啓蒙が課題としてあげられます。栄養学そのものを捉えてみても関連エビデンスの構築と収集、ならびに実験科学に根差した理論構築、実践評価の必要性は言うまでもありません。そして、指導サイドにおいても「栄養評価」「栄養診断」などの栄養学を巡る様々な方法論の修得と実地訓練の方法も重要になっております。ここにおいて、何よりも大切なことは、医師と管理栄養士、薬剤師、看護師を中心に多職種との連携を実践に生かしていくことです。「管理栄養士のあるべき姿と将来」をテーマに栄養関連学会が横断的に話し合える場を、この学会で提供したいと考えております。多くの栄養関連学会の中心的立場にある方々にご参集いただき、小松龍史日本栄養士会会長も交え、合同パネルディスカッションを企画し、第13回大連合大会のもう一方の柱と致します。

野中 博東京都医師会長にお願いし「医師、管理栄養士のかかわりの中でこれからの新しい医療への展望」に関する講話を拝聴できる機会も用意しました。
また、高齢者の栄養をテーマとした市民公開講座においては、本年度から施行された「日本人の栄養摂取基準(2015年版)」の内容を実際策定に携わった方々から国民目線で解説いただき、その内容を分かち合う機会も10月2日、都市センターホテルに用意しました。この企画への参加もお願いしたいと考えております。

第36回日本臨床栄養協会総会 会長挨拶

第36回日本臨床栄養協会総会
会長 白石 弘美(人間総合科学大学)

この度、第36回日本臨床栄養協会総会を平成27年10月2日(金)から4日(日)までの3日間、都市センターホテルにおいて、第37回日本臨床栄養学会と共同で第13回大連合大会として学術集会を開催させて頂くことになり、私自身および大学教職員一同にとりましても大変光栄に存じております。

大会のメインテーマである「疾病の発症と重症化を予防する栄養学」から、改めて栄養学の目的は何なのかを考えてみると、従来までの栄養学は炭水化物、タンパク質、脂肪といった栄養素の概念でしか捉えてきませんでした。

一方、近年の医療では人間としての価値観を認めて、個別の価値観に応じて支援する医療と捉える、ナラティブ・ベイスト・メディスン(Narrative Based Medicine:物語と対話に基づく医療)ということが提唱されてきました。このように疾病予防や重症化予防に用いる栄養学が科学である以上、人間にとって幸福をもたらす価値あるものでなくてはなりません。さらに、多様化していく人間の価値観に沿った「人間に優しい栄養学」として、医療における栄養・食事管理で細かく対応していくことが、これからの栄養学の目的だと思います。

そのためにも医療における栄養治療には、栄養療法に精通した医師、メディカルスタッフが協力して、患者の価値観とともに疾病予防・重症化予防に向けたチーム医療が欠かせません。しかし従来まで、栄養治療におけるNutrition assessmentやNutrition treatmentの医師教育は不十分であるとも言われています。またメディカルスタッフとして活躍する管理栄養士も栄養指導をするだけで、指導前後の栄養評価や病態変化に対応した検討・考察が不十分であったとの反省もあります。

この度の日本臨床栄養学会と共同の第13回大連合大会学術集会では、特別講演3題を初めシンポジウム・ワークショップなどでの「臨床栄養学のあるべき未来」(仮題)、「行き残りをかけた管理栄養士のフロンティア精神」(仮題)や、教育講演など臨床栄養学を中軸にして横断的に試みました。また、公開講座では「高齢者社会を迎えてのわが国の食事-何を食べて健康寿命を延ばそうか-」(仮題)など日本の社会現象から、健康寿命の具体的な実践のあり方を話題として企画致しました。広く市民や医療・福祉に従事している方々の参加を募ります。そして日本臨床栄養協会の「医師と栄養士が手を組んでおこなう臨床栄養の実践」という設立趣旨にも有るように、当協会などを始めとして、他学会とも協調した臨床栄養学の必要性や具体的方法を検討・考察すると同時に、疾病の多様化に対応する栄養素材の開発も重要であります。このためにも本大連合大会学術集会で会員が一同に会し、新しい栄養学への取り組みなどの研究が発展する基礎になればと願っています。